2011年10月28日 10:02

朝日新聞に川上弘美さん萩尾望都さんの原発事故に関するインタビュー掲載。川上弘美さんの言葉が胸を打つ…。

神様 2011

今日は朝から喉が痛くて、風邪を引いたみたいです。明らかに昨日からの急激な寒さの影響で、寒いとすぐ風邪を引いてしまう自分の身体の弱さにがっくりきました…。寒いと風邪を引きやすくなるので、みなさん、寒さ対策は確りと行ってくださいね…。

表題に入りますと、本日の朝日新聞に、作家の川上弘美さんと漫画家の萩尾望都さんの原発事故に関するインタビューが掲載されています。川上広美さんの言葉が胸を打つ…。萩尾望都さんのインタビューの方は原発を魅力的だが危険な女性に擬人化する(いわゆる萌え擬人化)というステロタイプ(ありがち)な発想なので、あまり見るべきところはないのですが、「3月11日以降、原発がメルトダウンしたのは中学生でも分かること」と、当時の安全デマ(3月の原発事故当時は、福島原発事故は安全であるというデマがテレビやインターネットを介して大量にばら撒かれた)を一気呵成に切り捨てているのは、SF漫画家として理性的な合理主義者として知られる萩尾望都さんらしいなと思いました。

漫画評論家の夏目房之介さんは、漫画家の山岸凉子さんの漫画における柔らか味を排した針のような描線には、女性的とされる感情、すなわち非論理的な感情を拒絶する、理性によって世界に向かおうとする意志がある(フェミニストな理性的女性の意志がある)ということを述べていますが、同じ意志を萩尾望都さんの漫画にも感じますね。山岸凉子さんは昔から原発の危険性を理性的に警告しており(漫画「パエトーン」)、萩尾望都さんも「3月の時点でメルトダウンが起きていたことは論理的に考えれば誰にでも明らか」と、非論理的な安全デマを切って捨てているところに、二人に共通する理性への厚い信頼を感じました。

3月の時点において、非理性的な安全デマに惑わされず、原発の危険性を重く見ていたのは、僕の見るところ、男性よりも女性の方が圧倒的に多いと思います。福島原発事故という危機的状況において、男性よりも女性の方が理性的で論理的な正しい行動を取っていると感じました。僕が3月に九州の福岡に避難したとき、福岡中のホテルに避難者が大勢おりまして、その避難者のほとんどは女性でした。僕のように着の身着のまま急いで逃げてきた避難者の方々とお話したりしましたが、それらのお方々、みな女性でしたね。福岡中のビジネスホテルのロビー見渡す限り女性ばかりの状況でした。原発のメルトダウンを理性的・論理的に判断したのは男性より女性の方がずっと多かったと思います。一般に流布される「女性は男性に比べ非論理的・感情的」という言説はあてにならないまやかしの男尊女卑言説であり、本当のところは女性の方が男性よりもずっと理性的で論理的な素養とそれを実際の生活に活かす意志を持っていると、僕は感じますね…。おふた方のインタビューを抜粋引用して紹介致しますね。

潮出版社無料WEBコミック『パエトーン』山岸涼子
http://usio.feliseed.net/paetone/

朝日新聞2011/10/28オピニオン面「放射能汚染を物語る」より

萩尾望都インタビュー
「いつか戻れる」希望を込めて

(福島原発事故がテーマの)「なのはな」という短編を、雑誌「月間フラワーズの8月号」で書きました。(中略)3月11日に地震、原発事故、津波がいっぺんに来て以来、楽しいことが何も考えられなくなってしまいました。原発の構造や過去の事故について調べ、すぐに「ああ、メルトダウンだ」とショックを受けました。核燃料が熱を持ち続けているのに水で冷やせないとなれば、溶けるしかない。科学的に考えれば中学生でも分かることです。でも一週間立っても二週間立っても政府は「だいじょうぶ」を繰り返すばかり。(中略)

チェルノブイリの強く汚染された地域は30年たっても立ち入り禁止です。主人公(原発事故の影響で福島から避難移住した「なのはな」の主人公)も、もしかしたら30年後も自分の住んでいた土地に戻れないかも知れない。でも60年後、90年後はどうでしょう。それぐらいの長い長いスパンであっても、「いつか」という「希望」を持っていたい。

「なのはな」の創作中に思いついたのはフラワーズ10月号に掲載した「プルート夫人」です。放射性物質プルトニウムが絶世の美女「プルート夫人」となった現れ、彼女を裁こうとする人々に対して自己弁護するというブラックコメディーです。(中略)

反乱の可能性(原発事故の可能性)をシビアに考慮していれば、もっと効果的な(原発事故に対する)対策を講じられたでしょう。いまさらですが、原発について反省し再考したいです。

川上弘美インタビュー
こんなにも「日常」は変わった

私はずっと「日常」のことを書きたいと思って小説を書いてきました。それも一見瑣末なこと。お酒を飲んだり、散歩をしたり、夜空を見上げたり。「生きている」ということは日常を過ごすことだと思っているからです。福島の原発事故で大量の放射性物質が撒き散らされたことは、私たちの日常に強い影響を与えました。日の光が当たるなんでもない一日が、今回の事故でどうかわってしまったか。9月に出版した小説「神様 2011」では、それを確認するというよりも、どうしてこんなことが起こってしまったのかという気持ちで書きました。

元になったのは1993年に書いた最初の小説「神様」です(引用者注:本作は筒井康隆さんとASAHI-NET主導のネット文学賞であるパスカル短編文学新人賞を受賞。筒井康隆さんに絶賛されました。メルヘンティックなとても素敵な小説、僕の最も好きな小説のひとつです。神様2011に収録されています)。「くまにさそわれて散歩にでる」という作品。本当の熊ではなく、言葉が話せて細かい心遣いもできる、童話のイメージに近いくまです。短い小説ですが、自分の色々なものがつまっていると思います。

「神様 2011」では、それを「原発事故の後、高濃度の放射能で汚染された地域に住むくまと『私』が、防護服を着ずに散歩に出る」という設定に変えました。(中略)

最初は、この小説を発表するつもりはありませんでした。あの事故を言語化するやり方として、適切かどうか、自分でも分からない。あえて出版したのは、「原子力は人間の手に余る」ということを、私自身にできるやり方で、どうしても訴えたかったからです。

45億年前、地球ができた当初は今よりもずっと多くの放射性物質がありました。長い長い年月の間に放射性物質が自然に崩壊し、少しずつ減っていったことで、複雑な生命の住める環境がようやく整ったのです。せっかく放射線の少ない環境になったのに、なぜ今になってわずかな「ウラン235」という放射性物質をかき集めて核分裂させ、さらには自然界には存在しなかったプルトニウムという放射性物質をつくり出すのか。

発表前に、放射線の専門家の方に作品の内容を確認していただきました。その方が「福島ではもっと恐ろしいことが起こっています」とおっしゃったのが、強く印象に残っています。

私は理系出身(引用者注:川上弘美さんはお茶ノ水女子大理学部卒)でSFに親しんできました。そのせいか、「人類は、いつ、どんな風に滅びるのか」ということをいつも考えます。生物としての「種の寿命」は数百万年程度と言われています。人類もいつかは種としての終わりを迎える。放射性物質の利用は、自分達の手でわざわざ終わりを早める可能性を広げる行為ではないか。

みんなが持っていた「核戦争で世界が滅びるかも」という思いは冷戦の終結で少し緩みました。でも、実は原爆も原発も原理は同じ。今回の事故でも、広島型原爆の168倍もの放射性セシウムが撒き散らされた。世界が滅びる脅威は少しも緩んでいなかった。

希望と絶望は常に同居していると思います。人類ってたいしたものじゃない。技術力は高くて核兵器や原発をいっぱい作ったけれど、それを制御する力はない。そうした面では非常に絶望的です。

でも、生物としてみれば、「生きているだけですごい」と思います。日常がどんなに変わってしまったとしても、生の本質を味わう自由なのびのびとしたひととき、生きているよろこびはありますし、それを手放すことは決してしたくない。そう思っています。

川上弘美さんの考え方が僕とあまりに同じでシンクロぶりにビックリしましたね…。『SFに親しんできました。そのせいか、「人類は、いつ、どんな風に滅びるのか」ということをいつも考えます。』は僕もよく考えます。西原 理恵子さんの著書「面白くても理科」(サイバラの理科本だったことは覚えているのですが、もし記憶違いで違う本だったらごめんなさい。「もっと面白くても理科」の方かも知れません)で、種の寿命を研究している生物学者さん(今手元に本がないので名前が分からなくて申し訳ありません)が、「人類の種の寿命はどうなりますか」とサイバラに聞かれて「人類の場合は、通常の種の平均寿命を遥かに下回り滅亡するでしょう。原因は自滅でしょう」と淡々と答えていたのが強烈に記憶に残っていますね…。僕もこの意見に賛成です。人類の種の終焉は、他の種を身勝手に破滅に巻き込みながら、自滅するでしょうね…。

ただ、人類が種全体の愚かさによって核戦争や原発事故などの自滅行為を引き起こし滅んでいくのはもうどうしようもないことで、我々一人一人の個々人にはどうにもしようのない太刀打ちできないことです…。それについては、諦念を持ってあきらめるしかないと僕個人は思っています。人類という種全体の愚かしさに対して、個人は完全に無力です…。そこにおいての破滅については、人類の自滅を淡々と語った学者さんのようにもうあきらめて、「日常がどんなに変わってしまったとしても、生の本質を味わう自由なのびのびとしたひととき、生きているよろこびはありますし、それを手放すことは決してしたくない」と考えるようにしたいと思っていますね。ウルリッヒ・ベックがリスク社会論で唱えたように、人類全体を危機に晒す行いが科学技術の発展とともに増大してゆくことで、人類は絶滅リスクを飛躍的に増しつつあり、しかもそれは誰にも制御できないのですから…。

私たち個人が一人一人できることは、自分と自分の大切な人々には危険が及ばないように最大限の努力をする、そして、杞の国の人のように最終的破滅をひたすら心配するのではなく、危険には注意を払いながら、自分自身の生活を楽しむ心を忘れないようにするということですね。川上弘美さんは、僕が常々抱いているこういった諦念の上に生きていることが伺えて、共感が持てますね…。

この文章を書いていましたら、amazonから宅急便で星のカービィwiiがやってきましたよ!!嬉しい!!状況は絶望的ですが、こういう嬉しさを忘れないようにしたいですね…。日常が危機的なときこそ、この危機は私たちが生きている間ずっと続くのですから、ゲームや映画やアニメや音楽などの、心を慰め楽しませてくれる娯楽の価値は、平和な時代よりも、遥かに大きな高い価値を持つものとなっていると感じますね…。

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