2011年08月26日 14:45

楳図かずおさんが漂流教室と震災と原発について語るインタビュー記事ご紹介致しますね。ローマが出てくるのが流石…。

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楳図かずおさんが漂流教室と震災と原発を語るインタビュー記事が8月23日朝日新聞に掲載されておりますね。僕は楳図かずおさんの漫画の大ファンでして、「14歳」「わたしは真吾」「洗礼」「漂流教室」「イアラ」などの長編作品はどれもマンガ史上における最高の傑作、また短編も信じられないほどの傑作揃い、驚くべき天才漫画家だと思っているので、とても興味深く読めました。引用してご紹介致しますね。

楳図かずおインタビュー
「自然なおざり 砂漠の近未来 人工が勝ると、自分たちが破滅」
(朝日新聞2011年8月23日文化面)

――「漂流教室」は人が死に絶え、荒廃した世界に子供たちが飛ばされます。

楳図「ずっと子どもをテーマに描いていました。大人と違って常識にとらわれないので、大きな可能性を秘めているからです。そこで大人のあまり出ない、子どもばかりが活躍する、決定版的な作品を構想しました。子どもだけの世界を瞬間的に作り出そうとしたら、タイムスリップした未来の砂漠が浮かんだのです」

――そこは環境が破壊された近未来という設定です。

楳図「70年代初め、排ガスなどが原因の光化学スモッグが気になっていました。非常にショッキングで、今までにない良くない兆しを感じました。まだ、それ行け、それ行け、とばかりに、右肩上がりで、明るい未来を信じている時代でした。マンガでも、未来はロボットが出てくる夢の世界、と。でも、あれ、そうかな、という不信感がありました」

――科学技術の進歩は、生活を豊かにすると信じられていたと思いますが。

楳図「自然と闘うのが文明であり、科学は人間の想像を具現化し、立ちふさがる自然を克服する。そうでなければ人間は、イソギンチャクやサルと変わらない存在です。でも、人工の象徴である都会、例えばローマのような繁栄した都市が滅びていったように、自然より人工が勝ってしまうと、自分達自身が破滅を迎えるのではないでしょうか」

――代名詞である恐怖マンガも、科学ではとらえきれない闇を描いていますね。

楳図「子どものころ過ごした奈良の山奥では、夜聞こえる動物の鳴き声、雪の重みで竹が折れ、すきま風が吹き込む音など、自然の怖さ、迫力があり、その中に人間がいる、という感覚があった。都会では、そんな原始的な本能である恐怖心をないことにしがちです」

――自然の摂理から外れた科学への過信は、震災による原発事故を引き起こしました。

楳図「原発は人工の最たるものですね。造ったはいいけれど、制御できなくなった。後に『14歳』という作品で、すべてのゴミが沈み込むプレートに捨てていたら、噴火が起き、地上に噴き出す場面を描いた。地面の中に何でもかんでも埋め始めると破滅だ、と思って描いたのですが、原発の使用済み核燃料はまさに地下に貯蔵しているんですね」

――震災後の風景に「漂流教室」が重なって見えた人も多いと思います。ただ、児童も教師も取り乱した「漂流教室」と違い、被災者は整然としていました。

楳図「東北の方々は互いに助け合える人たちでした。でも距離のある東京では商品の買い占めなど、パニックになった。隣人とのつきあいを嫌がり、町中には防犯カメラを至る所に設置し、そもそも疑心暗鬼に暮らしている。東京で大地震が起きたら、ちょっと怖い」

――人類は破滅に向かうのでしょうか。「漂流教室」で子どもたちは「未来にまかれた種」だと自らに言い聞かせ、荒廃した世界で生き抜く決意を固めますが。

楳図「悲嘆にくれる子どもたちが前向きに頑張ろうと変わっていく話を描きたかったのです。私も人類の一員なので、明るい未来を望むけれど、このままでは大変です」

――何が必要ですか。

楳図「繁栄と破滅は、表と裏だと思うのです。繁栄が自然を乗り越えた分だけ、乗り越えられた破滅が増えるのは当然の論理のはず。世の中は賢くなりすぎて、それを見ないようにしています。都合の良い面だけでなく、表も裏もかみしめた英知を持ってもらいたい」

鉛から造った調味料「サパ」、鉛製の食器、そして鉛の水道管から溶け出した鉛による鉛中毒が滅亡の一因ではないかとされているローマ帝国が出てくるのが実に流石という感じですね。

ローマ帝国衰亡史
http://www.asahi-net.or.jp/~pu4i-aok/core/bookdata/200/b276.htm
さてギボンも塩野もローマ帝国衰亡の原因として鉛中毒には触れていないが、元老院など指導階級が好んだ赤ワインならびにワインを使った料理が鉛被毒されたという説がある。ワインを甘くするために葡萄果汁(マスト)を鉛の鍋で煮詰めてサパ(sapa)という添加物を作ってこれをワインに加えた。サバは酢酸を含んだため、鉛が酢酸鉛となってサパに含有されるようになった。また食器も鉛製であり、上流階級は日に20mgの鉛を摂取し、鉛中毒になり、不妊、発狂、死の原因となったという。ネロやコモドウスは鉛中毒の可能性はある。そうしてゲルマン人に乗っ取られることになったのだという。

作曲家ベートーヴェンが、その晩年にはほぼ耳が聴こえなくなってしまった原因として、近年の研究では鉛中毒が有力説とされている。それは、ワインを非常に愛飲していたベートーヴェンの毛髪から、通常の100倍近い大量の鉛が検出されたからであった。当時のヨーロッパにおいて、ワインの醸造過程の中では、甘味料として酢酸鉛を含むサパなどの鉛化合物類が加えられており、鉛中毒は、難聴をも引き起こすとされている。

あと、インタビュアーが『代名詞である恐怖マンガも、科学ではとらえきれない闇を描いていますね』というのは、楳図かずおファンとしてはこれが違うなと思いますね。楳図かずおさんの漫画の特徴は、謎に充ちた不可解な出来事にも、ちゃんと合理的な筋の通った説明を最終的には必ず付けるところにあって、それが他のホラー漫画にはない、ミステリ小説の謎解き的な面白さと謎の解かれる爽快感を出しているところにあるんですね。楳図かずおさんの漫画は、非論理的・不条理なものを許さない、凄く合理的・論理的・科学的な思考をベースとしていて、そういった合理性を突き詰めた上で恐怖を描いているところに、独特の奇妙な味わいがあると思います。楳図かずおさんの作品には、外面が内面に影響を与え、内面が外面に影響を与えるという、見た目と内心が互いに影響しあって循環することで怪物が生まれる作品が多いですが、これなんかも単に怪物が出てくるより、説得力が遥かにある。それは、怪物が形成される過程を論理的に描いているからです。楳図かずおさんの漫画は以下のようなパターンで怪物が生まれることが多いです。

外見が醜く生まれてしまう・もしくは怪我などで後天的に外見が醜くなってしまう→外見の醜くさゆえに周囲から蔑まれる→蔑まれるがゆえに内面が歪んでしまう→歪んだ内面が外見に影響して、ますます容貌が怪物化する→ますます蔑まれる→ますます内面が歪む→ますます外見が怪物化し、身も心も完全に怪物と化してゆく。

楳図かずおさんは40年以上前に、恐怖漫画において、きちんと「恐怖とは何か」「怪物とは何か」ということを心理的側面から合理性・論理性を重視して解釈した作品を描き続けていて、本当に凄いとしか言いようがないです。「自然より人工が勝ってしまうと、自分達自身が破滅を迎えるのではないでしょうか」というのも、ずっと描かれ続け、傑作長編「14歳」においてメインモティーフとして見事に昇華されたテーマですね。楳図かずおさんの作品はどれも素晴らしく、お勧めです。時代を超えた優れた傑作群は、どれも実に見事としか言いようがありません。未読のお方々には、ぜひ読んで欲しいですね。

最後に余談ですが、14歳と漂流教室はどう考えても舞台となっている世界がそのまま繋がっている感じでして、ゆえに漂流教室の生存メンバー(もしくは彼らの子孫達)は、14歳のメンバーが地球に戻ってくれば無事助かる可能性が高い。14歳の最終回には生命に対する優しさと愛情を感じましたね…。『悲嘆にくれる子どもたちが前向きに頑張ろうと変わっていく話を描きたかったのです。私も人類の一員なので、明るい未来を望むけれど、このままでは大変です』

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