内部被曝の脅威 ちくま新書(541)
黒い雨 (新潮文庫)

本日、関東圏全域に黒い雨が降っていますね…。福島第一原発の状況が極めて悪化した状態で停滞しており、酷いニュースばかりで気が滅入ります…。避難していたときにお金が掛かってしまったので生活も大変で、なんで、こんなことになったんだろうと思うばかりです…。福島第一原発から、僕も含めて日本の何千万人の人々をじわじわと病気にして殺してゆく放射性物質を放出し続けている現状を思うと、娯楽も楽しめないです…。

放射線分子は塵や埃に付着して広範な地域に飛散し、地上に落下する。一部は発生した水滴に混じり、いわゆる「黒い雨」(放射性物質の混じった雨)となって降下し、雨滴に触れた者に放射能障害を与える。また、空中、水中に浮遊し、食物の表面に付着した放射性物質は呼吸、飲水、食事を通じて体内に摂取されて肺と胃から血液に運ばれ、全身のどこかの組織に沈着し、アルファ線、ベータ線などを長時間放射し続ける。そのため、体細胞が傷つけられて慢性の疾病をゆっくり進行させ、また、生殖細胞が傷つけられて子孫に遺伝障害を残した。

このような被曝を内部被曝といい、これまで、アメリカの被曝米兵と復員軍人局の補償をめぐる論争のなかで、また、広島・長崎の原爆被曝者と厚生省の認定をめぐる論争のなかで、その人体に対する有害性をめぐって争われてきた課題である。

加害者側は、被害を与えるのは体外からの高線量放射線だけで、体内に入った放射性物質からの放射線は低線量であり、被害は一切無視できると主張する。被害者側は、内部被曝は体外被曝とは全く異なるメカニズム(ペトカウ効果)で細胞を破壊し、微量でも重大な被害が起こると訴えている。それを裏付ける研究が数多く報告されており、また世界的規模での核実験および諸々の核施設の内外に発生している膨大な被爆者の数がこれを証明していると主張している。

内部被曝の問題は、放射線被害をめぐる加害者と被害者の国際的な規模での論争の焦点である。現在も「科学的根拠がない」として、被害者への補償が全くされていない現実がある。この論争に終止符を打つためには内部被曝のメカニズムの解明が必要とされるが、(国家・原子力産業からの介入圧力によって)内部被曝に関する研究の成果がなかなか認められない複雑な事情、そして技術的困難が横たわっている。(中略)

放射線の人体に対する影響の医学的な解明を阻んでいた壁の一つは、放射線に対する細胞膜の強大な障壁だった。アブラム・ペトカウは1972年、マニトバにあるカナダ原子力委員会のホワイトシェル研究所で全くの偶然から、ノーベル賞に匹敵する次のような大発見をした。即ち、「液体の中に置かれた細胞は、高線量放射線による頻回の反復放射よりも、低線量放射線を長時間放射することによって容易に細胞膜を破壊できる」ことを実験で確かめたのである。

ペトカウは牛の脳から抽出した燐脂質でつくった細胞膜モデルに放射線を照射して、どのくらいの線量で膜を破壊できるかの実験をしていた。エックス線の大装置から15.6シーベルト/分の放射線を58時間、全量35シーベルトを照射してようやく細胞膜を破壊することができた。

ところが実験を繰り返すうち、誤って試験材料を少量の放射性ナトリウム22が混じった水の中に落としてしまった。燐脂質の膜は0.00001シーベルト/分の放射を受け、全量0.007シーベルトを12分間被曝して破壊されてしまった。彼は何度も同じ実験を繰り返してその都度、同じ結果を得た。そして、放射時間を長く延ばせば延ばすほど、細胞膜破壊に必要な放射線量が少なくて済むことを確かめた。

こうして、「長時間、低線量放射線を放射する方が、高線量放射線を瞬間放射するよりたやすく細胞膜を破壊する」ことが、確かな根拠を持って証明されたのである。これが、これまでの考え方を180度転換させた「ペトカウ効果」と呼ばれる学説である。

人体の細胞は全て体液という液体に包まれている。体内で放射されるアルファ線、ベータ線などの低線量放射線は体液中に浮遊する酸素分子に衝突して、電気を帯びた活性酸素に変化させる。荷電して有害になった活性酸素は、電気的エネルギーで、内部を守っている細胞膜を破壊し、大きな穴を開ける。

その穴から放射線分子が細胞内に飛び込み、細胞内で行われている新陳代謝を混乱させ、細胞核の中にある遺伝子に傷をつける。遺伝子を傷つけられた細胞が死ねば何事も起こらないが、生き延びると細胞は分裂して、同じところに同じ傷を持つ細胞が新しく生まれる。分裂は繰り返され、内臓組織は細胞がたえず生まれ変わって生き続けるが、傷もそのまま受け継がれ、何かの機会に突然変異を起こす。細胞が内臓、諸臓器を構成する体細胞なら白血病、癌、血液疾患などの重篤な慢性疾患を起こして死に至らしめる。

また、生殖に関わる細胞なら代々、子孫の細胞に傷が受け継がれ、何代目かの子孫に障害を発生させる。これがペトカウ効果説に導かれた低線量放射線の内部被曝の実相である。
(肥田舜太郎、鎌仲ひとみ「内部被曝の脅威」)

医師肥田舜太郎さん講演「58年間ヒバクシャを診てきた」
http://www.tanpoposya.net/jco930/4th_2003/930_4th_hida.htm
(原子爆弾の)爆発のときに上から降ってきた放射線に直接貫かれたのを、これは「直爆」と言いますね、直接ヒバク。これだけは政府もちゃんと認めてます。

ところが、あとから街へ入った人、つまりその日の午後ね、遠くにいた周りの部隊から兵隊がいっぱい来た。部隊の命令で救援に入ってるんですね。消防夫も来ます。これがみんな焼け跡で大騒ぎして、どんどん死にました。それから警察官も死んだ。援助に入った人がだいぶ死んだんですね。死なないまでも、みんな病気になります。で、それが一月越しの、三月越しの、半年越しの、みんな死んでいくわけですね。
 
つまり、あとに入って、空中やそこら辺に残っていた放射性物質のついた埃を吸い込むんです。それが体内に入って、何十年もかかって人を殺していく。これが低線量ヒバク、体内ヒバクの恐ろしさなんです。原子力発電所で漏れてくる放射線にやられるのはみんなこれです。それから今アメリカに260万とか300万と言われるヒバクシャがいます。これは原発の事故とか、あるいは原子力発電所でウランを吸い込んだとか、プルトニウムを吸い込んだ。あるいはチェルノブイリの灰が降って、欧州全体でたくさんの人が死んでます。

つまり、本当の核兵器の恐ろしさ、あるいは核の恐ろしさは、直接ガイガーカウンター持っていってこうやってさわって、ああ、どうとかこうとかいうのはあんまり怖くないんです。怖いけども、それは死んでも、「ああ、これは放射線で死んだ」って分かる。ところが、何で殺されたっていうのが分からずにたくさんの人が殺されてるわけです。私はこのことをみんなに知らせたい。だから、核兵器もなくさなくちゃいけないし、原発も止めなきゃいけない。

で、この被害がアメリカの政策と日本の政府の政策で隠されてるんです。つまり、「原子力発電所は安全だ」とか、それから「あとから入って少々の空気吸ったりしたのは、微量の放射線だから心配ない」。これがアメリカが戦後ずーっと世界に宣伝し、国連を動かし、国連に嘘の報告をし、国連の国はみんな放射線被害、原爆被害ってのは直接ピカッてやられたのが怖いんだ、そうでないのは心配ないって思ってるんです。
 
私は30年間外国を歩いて、もう3千回か4千回公演して歩きました。テレビで放送もしました。そこで、ピカも浴びてない、2週間後に入ってきた全く関係のない人がこういうふうに死んでるということを話してきました。

で、これはこの人は1週間後だからまだ何とか僕らは見当つけるけれども、半年後、1年後、5年後、10年後、20年後、30年後に死んだら全く関係ないことになっちゃう。こういうかたちで人を殺すのが核兵器だし、放射能なんです。このことをしゃべれる人が日本にいない。

日本の医者で放射線に関心を持ってる医者はたくさんいますよ。だけど残念だけど証明する方法がないんですよ。私はこの癌は広島でヒバクした癌だよって僕は思ってる。で、これはほかの先生が見てもそうは言えないんです。今の医学には証明の方法がない。つまり医学で分かる前に人を殺すことだけやっちゃったわけです。いまだにそれを明らかにする医学はできてない。

今の医学の「細胞単位」ではなしに、その60億分の1の「分子の段階」、酸素分子とか炭素分子とか、そういうものと同じように放射性分子がそこで仕事をして人間を殺していくということが明らかになるには、私はあと30年ぐらい必要だろうと思う。これ、研究する医者がいないんです。金がかかるし、こんなことは誰もやらない。だから今放射線については世界中の人間が全部無力です。医者も無力です。

危険への想像力、根こそぎ−−作家・辺見庸さん(66)=宮城出身
これまで私たちが経験したこと、想定していたことなど何の参考にもならなかったんです。過去を教訓に生かす対応力、予知能力が全く甘かったということでしょう。原発への対応も同じです。どんな危険性があるかという想像力が、根本から問われている。それは科学技術の問題ばかりでなく、放置してきたマスコミにも言えますね。

面影もなくなってしまったふるさとの思い出? 被災者たちへの励ましの声? 今この時期、それを私に語らせてどうするの?

それより原発の最初(12日)の放射能漏れで、(チェルノブイリのソ連と同じく)発生から数時間たっても詳細を明かさなかった原子力安全・保安院の姿勢は何なのか。メディアはもっと怒れ!
(毎日新聞)

レイモンド・カーヴァー「ファイアズ」より

「癌患者になった郵便配達夫」

家の中を毎日這い回りながら
郵便配達夫は笑うことを忘れてしまった。
彼はすぐに疲れるし、体重もどんどん減っている。
それだけのことさ。仕事はとっておいてくれてるはずだし。
だいいち、彼には休養が必要なのだ。
でも彼には何も知らされないだろう。

空っぽの部屋から部屋へと移りながら彼は
とんちんかんなことを頭に思い浮かべる。
トミーとジーンのドーシー兄弟のこととか、
グランド・クーリー・ダムで
フランクリン・D・ローズヴェルトと
握手することとか、
彼が一番好きだった新年パーティーのこととか。
そういうのが本一冊書けるくらいいっぱい。
彼はそれを細君に話すが、この細君も
まだ働き続けているものの
負けず劣らずとんちんかんなことを思い浮かべている。
でもときどき夜に彼は
夢を見る。
ベッドから起き上がって
服を着て外に出て
喜びに打ち震えている夢を……

彼はそういう夢を憎む。
目が覚めたときには
もうそのかけらひとつ残っちゃいないからだ。
まるでこれまで何処にも行かず、
何もやることができなかった、
そんな気がするのだ。
そこに存在するものは
部屋と
太陽の姿の見えない朝と
ドアの取っ手が
ゆっくり回る音だけ。

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