2011年03月01日 09:22

魔法少女まどか☆マギカ、コミックス第1巻表紙に書いてある英文、キング牧師の言葉です…。魔法という暴力の否定。

amazonまどか☆マギカ関連商品一覧
魔法少女まどか☆マギカ 4(完全生産限定版) [Blu-ray]
キング牧師―人種の平等と人間愛を求めて (岩波ジュニア新書)

魔法少女まどか☆マギカ、コミックス第1巻表紙の左上に小さい文字で書いてある英文、読んでみると、キング牧師の有名な言葉ですね。暴力に対して暴力で対抗することの愚かしさと破壊性について述べた有名なスピーチです。まどか☆マギカ第1巻カラー表紙左上に以下の英文が記載されています。amazonの画像でも確認できます。

Darkness cannot drive out darkness; only light can do that.
Hate cannot drive out hate; only love can do that.
（魔法少女まどか☆マギカコミックス第1巻カラー表紙左上の小さな文字で書かれている英文）

闇で闇を追い払うことはできない。光のみが、それをなしうる。
憎しみで憎しみを追い払うことはできない。ただ愛のみが、それをなしうるのだ。

魔法少女まどか☆マギカ (1) (まんがタイムKRコミックスフォワードシリーズ)

下記サイトさんに本スピーチ全文載っております。

第141回『戦争について　Jefferson & King』
http://www.transmedia-solutions.co.jp/magazine/weekly/lesson141.html"The ultimate weakness of violence is that it is a descending spiral, begetting the very thing it seeks to destroy. Instead of diminishing evil, it multiplies it. Through violence you may murder the liar, but you cannot murder the lie nor establish truth. Through violence you may murder the hater, but you do not murder hate. In fact, violence merely increases hate. Returning violence for violence multiplies violence, adding deeper darkness to a night already devoid of stars.
Darkness cannot drive out darkness ― only light can do that.
Hate cannot drive out hate ― only love can do that."

「暴力は、自らが破壊しようとするものを作り出しながら下降してゆくスパイラルであることに、根本的な弱さがある。邪悪を減少させるかわりに、増幅させてゆく。暴力によって、嘘をつく者を殺すことはできるだろう。しかし、嘘を殺すことはできず、真実を築くこともできはしない。暴力によって、憎しみを持つ者を殺すことはできるだろう。しかし、憎しみを殺すことはできない。暴力に暴力を返すことで暴力は増幅し、すでに星のない夜の闇をさらに深くする。暗闇によって暗闇から抜け出すことはできない。それができるのは光だけだ。憎しみによって憎しみから抜け出すことはできない。それができるのは愛だけだ」

こうして立ち上がったKingは、反対派や警察から何度も暴行を受け、投獄され、刺されて死にかけたことも、家に爆弾を仕掛けられたこともありました。1964年に公民権法制定の後、ノーベル平和賞を受賞するも、39歳の若さで反対派の凶弾に倒れました。その彼の言葉だけに、単なる理想論ではない重みがあります。
しかし、このように立派な言葉に触れていても、実際にもしも身近に何かが起これば、私は躊躇なく復讐に向かうかもしれません。我が身に降りかかってみなければ、その重さは到底分からないものです。だから、難しい。何もないときに、考えておかねばならないのです。

まさに、これまでの全ての魔法少女における魔法という超常的、選民的な契約の力の暴力性、魔法少女の魔法、そのメシアニズムと選民主義に基づく神的な暴力性を根底から否定し批判している、魔法少女まどか☆マギカのメインテーマと読み解くことができますね…。まどか☆マギカは、魔法少女アニメの中心概念である魔法、メシアニズム的な超越的暴力である魔法というものに対する根本的な深い批判精神を持っている…。凄いです…。感動しました…。

「魔法少女が契約によって得る魔法という名の超越的・選民的な暴力は、自らが破壊しようとする魔女＝敵を作り出しながら下降してゆくスパイラルであることに、根本的な弱さがある。邪悪を減少させるかわりに、増幅させてゆく。魔法という暴力によって、魔女を殺すことはできるだろう。しかし、魔法少女から魔女を生み出す心の闇は殺すことはできず、愛と平穏を築くこともできはしない。魔法という暴力によって、魔法少女が悪と断罪する者達を殺すことはできるだろう。しかし、魔法少女自身のその殺人を止めることはできない。魔女の魔法という暴力に魔法少女の魔法という暴力を返すことで魔法というお互いの暴力は増幅し、すでに星のない夜の闇をさらに深くする。暗闇によって暗闇から抜け出すことはできない。それができるのは光だけだ。憎しみによって憎しみから抜け出すことはできない。それができるのは愛だけだ」

魔法少女まどか☆マギカのテーマだ…。カール・シュミットが、戦争と政治の根源であるとして唱えた「友敵理論」（まず始めに倒すべき敵を設定することによって、友と敵の二つの立場を作り出すことで、政治的な行動や闘争は可能になっているという理論、戦争や差別、メシアニズムはこの極端な形態の一つとされる）を乗り越えた世界にまどか☆マギカが到達するなら、それは創造における素晴らしい快挙ですね…。

彼（カール・シュミット）は、「政治」の根幹は友・敵の峻別と闘争であり、決定的な瞬間において敵の識別をし、覚悟を固めることにこそあると主張します。そして、闘争的な契機、しかも敵の文字通りの物理的なせん滅を本源的に志向し得る実体こそが政治的な団体であり、こうした意味において、主権国家は他のあらゆる社会団体・社会組織と本質を異にすると説きます。
（政治的なものの概念amazonレビューより）

友敵理論に基づくメシアニズムを否定する立場から、まどかが最後まで魔法少女（メシア）にならない、魔法という神的な暴力は振るわずに、最後まで一人の人間として平和を希求する道を歩むという選択も有り得るのではないかと僕は考えます。僕は、メシアニズム的な神的暴力（全てを独裁的に断罪する神的英雄の存在）は最終的に人間の手で否定され、人間が人間自身の手で平和を作り出さなければならないのだと考えているので（おそらくベンヤミンもそう考えていると思います、彼もまた、神的暴力より戒律が上にある）、まどか☆マギカの姿勢に感動致しました。

アーカード
「アンデルセン、お前に倒されても良かった。あの日なら、あの日暮れの荒野なら523年前のあの日ならあの日なら。お前に心臓をくれてやってもよかった。でももう、もはやだめだ。（人間をやめて、神の力によって、神の代行者となった）お前に私は倒せない。化物を倒すのはいつだって人間だ。人間でなくてはいけないのだ！！」
（平野耕太「ヘルシング」）

│アニメ | こころ

ねこねこ

記事検索

ねこねこブログ

2011年03月01日 09:22

魔法少女まどか☆マギカ、コミックス第1巻表紙に書いてある英文、キング牧師の言葉です…。魔法という暴力の否定。

「アニメ」カテゴリの最新記事

ねこねこ