2010年06月15日 15:35

僕の好きな指揮者「ハンス・クナッパーツブッシュ」、世界最高のブルックナー指揮者です!!

ブルックナー:交響曲第8番
ワーグナー:名演集

暑いですね…。梅雨を飛び越していきなり夏がきてしまったのかのようです。にゃんこも椅子に寝転んでぐったり涼んでいます。最近、フルトヴェングラーについて書くことが多かったので、彼の同時代の指揮者で僕の好きな指揮者をご紹介致します。トスカニーニは以前ご紹介したので、ミトロプーロス、クナッパーツブッシュのどちらかをご紹介しようと思い、フルトヴェングラー繋がりということで、今回はクナッパーツブッシュをご紹介致します。

クナッパーツブッシュは、フルトヴェングラーと同時期に活躍した、様々なお茶目なエピソードの数々でも知られるドイツの名物指揮者です。生真面目なドイツ人のイメージを覆す、大変にユーモア溢れる人間性でオーケストラのメンバーに親しまれました。名前が長いので、「クナ」という愛称で呼ばれています。その演奏は、フルトヴェングラーの演奏が『深く、豊か』である感じなのに比べ、『幅広く、メチャクチャに自由奔放』という感じです。リハーサルが大嫌いで、リハーサルはことごとく勝手にお休み(臨時休業)にしてしまい、生真面目なベルリン・フィルには受けませんでしたが、楽天的でバカンス好き(休日好き)のウィーン・フィルからは大いに受けたそうです。

エピソードとしては、彼は自由奔放にしてユーモア溢れる人柄で、ユダヤの人々を含め誰とでも仲良くなる人柄だったので、ユダヤ人を差別する生真面目な軍隊であるナチスからの受けは非常に悪く、その仲は険悪でした。彼は、フルトヴェングラーのようにナチスと和解することはなく、ずっとナチスと喧嘩していました。

クナッパーツブッシュのライバル指揮者クラウスを愛好したヒトラーが、「クナッパーツブッシュの指揮は粗野でどうしようもない指揮だ」と貶したのに対して、「ヒトラーとナチスは間抜け揃い」と痛烈にやり返し、ナチスの手で、音楽活動を行っていたミュンヘン(バイエルン州)から彼は追放されてしまいます。

ただ、終戦までずっとナチスと喧嘩していたおかげで、戦後は「ドイツ国内の反ナチス指揮者」という扱いになり、ナチスに協力した音楽家達のように戦争責任を問われることはありませんでした。ただ、連合国がポカミスで、ユダヤ人と仲が良く、反ナチスの芸術家であった彼を、「ナチス協力の反ユダヤ主義芸術家」のリストに誤って入れてしまい、戦後、音楽活動を停止させられてしまいます…。誤解が解けて、活動禁止が解除されてからは華々しく活躍しました。

ウィキペディア「ハンス・クナッパーツブッシュ」
子供の頃から音楽家に憧れていたが、家族、特に母と兄(後に会社を継ぐ)の反対もあり、ボン大学に進み哲学を学んだ。後にミュンヘンでも哲学を学び、卒業論文は『パルジファルにおけるクンドリー」であったと言われる。音楽の勉強もケルン音楽大学で行っており、ブラームス演奏で有名なフリッツ・シュタインバッハに指揮法を学ぶ。

1909年から1912年にはバイロイト音楽祭に、ハンス・リヒターの助手として潜り込む事に成功。それ以後、故郷のエルバーフェルトやライプチヒ、デッサウ、ミュールハイム(1910年に、ここでデビューしたと伝えられる)など各地の歌劇場やオーケストラで修行に入り、34歳の時の1922年には、ブルーノ・ワルターの後任としてミュンヘンのバイエルン州立歌劇場の音楽監督に就任する。翌1923年にはウィーンに初めて進出し、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とも1929年のザルツブルク音楽祭で初顔合わせを果たしている。しかし、客演先のオランダのハーグで、ヒトラーをからかうような発言をしたことがナチス高官の耳に入りヒトラーを激怒させ、1935年にバイエルン州での演奏活動を禁止され、同時にバイエルン州立歌劇場からも追い出された(後任は当時ナチ寄りとされたクレメンス・クラウス)。追放後はウィーンとベルリン、ザルツブルク音楽祭などに定期的に来演した。1936年からはウィーン国立歌劇場を根城に、1944年6月30日の『神々の黄昏』上演(爆撃で破壊される前の最後の上演)まで同劇場で精力的な演奏活動を繰り広げた。『黄昏』上演後は、終戦まで息を潜めていた。

1945年8月17日、ミュンヘンのプリンツレゲンテン劇場のバイエルン州立管弦楽団とのコンサートで活動を再開するも、1ヵ月後に連合軍から「反ユダヤ主義者」という誤った嫌疑で活動を禁止されてしまう(彼はユダヤ人とも交際が幅広かった。禁止解除後、連合軍は謝罪している)。2年後の1947年にバンベルク交響楽団を指揮し改めて活動を再開。

彼の代表的名演として戦後のバイロイト祝祭劇場でのワーグナー歌劇の指揮が挙げられますが(ほぼ毎年指揮した「パルジファル」が有名)、戦後のバイロイトでは、非ナチ・反ナチの音楽家を集めて、脱ナチスの演奏を目指していて、そのため、ワーグナーの専門家にして反ナチの言動で知られたクナッパーツブッシュに白羽の矢が立ちました。結果として、彼が指揮する、歴史に残るワーグナー歌劇の大名演が貴重な録音資料として残り、現代の我々も聴くことができます。ナチスに対して当初からうさんくさい邪悪なものを感じ取ることの出来た、クナッパーツブッシュの自由闊達な人徳の勝利って感じで、僕の好きなエピソードですね。

ウィキペディア「ハンス・クナッパーツブッシュ」
クナッパーツブッシュは大変な練習嫌いで通っていたが、たとえ練習なしの本番でも、自分の意のままにオーケストラを操ることができる類稀なる指揮者であった。一度も振り間違いをしなかった、譜面にはまったく眼をやらなかった、という楽員の証言もある程である。。練習嫌いな点はまた、同じく練習嫌いなオーケストラとして知られるウィーン・フィルからは歓迎されたという。第二次世界大戦中の爆撃で破壊され、1955年に再建されたウィーン国立歌劇場の再開記念公演で、リヒャルト・シュトラウスの楽劇『薔薇の騎士』を上演することになった時には、練習場所のアン・デア・ウィーン劇場でメンバーに向かって「あなたがたはこの作品をよく知っています。私もよく知っています。それでは何のために練習しますか」と言って帰ってしまった。この本番のライヴ録音はCD化されているが、『薔薇の騎士』の名盤の一つに数えられている。

他にも、練習のはじめに「みんな、こんなことやめてメシでも食いにいこう」と呼びかけたり、オーケストラの要請がありリハーサルをして臨んだ本番でミスが生じたら、「それみろ、練習なんかするからだ!」と怒鳴った、練習なしで行った公演でミスがあったら、演奏中にも関わらず「これは俺のせいだ!」と叫んだというなど、クナッパーツブッシュの練習嫌いの逸話は多数存在する。

スタジオ録音も撮り直しをしなくてはならないから嫌がっていた。スタッフから撮り直しを指示された時は「なぜだ。」と泣きだしたほどであった。

また、修行時代から三半規管に異常をきたし、ある程度以上頭を下げると下げた方向に体が倒れてしまうためお辞儀は不得手であり、せいぜい演奏前か演奏後に1回するかしないかだったと言われる。もっとも、「クナの出演する演奏会はすべて祝祭演奏会である」などと許容された晩年期には、熱狂的で鳴り止まぬ拍手にサービスでお辞儀をすることもあった。この病のせいで、飛行機はおろか乗船も難しく、ロンドン行きが限度のため、生涯ヨーロッパ大陸から離れることができなかった。

練習嫌いとともに口が悪いことでも有名で、オペラの練習の際に演奏が上手くいかないと、男性歌手ばかりか女性歌手に対しても、汚い罵りの言葉を浴びせかけた。残された貴重なリハーサル録音(『パルシファル』前奏曲)では、音程が揃わないヴァイオリンパートに対し思わず「豚め!」と口走っているのが聴こえる。しかし、一方ではそのさっぱりした素朴な性格でメンバーからはとても好かれていた。また、全く不運な経過で起こったアクシデントに対する対処法も心得ており、「クナの棒だと本番では安心して歌える」という歌手たちの述懐も残っている。(中略)

ナチスには終始冷淡であった。ただ、ナチス政権奪取後は流石に表だった批判はなく、ある時は体制に迎合してトーマス・マンを非難する論文に署名したり、ヒムラーの臨席による親衛隊相手のコンサートを主催するなど一定の距離を置いていたが、「彼のオペラを聴くのは苦痛だ。」とヒトラーに言われるほど嫌われ、ミュンヘンを追放されたことが、ナチス嫌いに拍車をかけることとなる。ウイーン時代には演奏会でのナチス式敬礼を拒否したり、ヒトラーを出迎えなかったり、ヒトラーのラジオ放送に悪態をついたり、ナチス式敬礼をした部下に「わしの前でそんな下劣なあいさつをするな!」と叱るなど、その反骨ぶりは相変わらずであった。そのためにナチスから冷遇を受けるが、クナッパーツブッシュ自身にとってはむしろ幸運であった。あれほどナチスによる音楽活動に従事していたにもかかわらず、戦後断罪されなかった最大の根拠となったのである。(中略)

ワーグナーは、高く評価される名演が多い。ワグネリアンの中には、「クナッパーツブッシュこそが、ワーグナーが意図する哲学的側面を巧く引き出せる指揮者である」と主張する者もいる。しかし、ワーグナーを愛していたヒトラーは、彼の一見粗野な態度などが気にいらず、「あれは軍楽隊の隊長が関の山」云々と言い、それが彼のミュンヘン追放の伏線の一つとなった。一方、ヒトラーが好んでいたクラウスは貴族的で、対照的なタイプだった。楽劇の中では『パルジファル』がお気に入りであり、バイロイトでは1951年から死の前年の1964年まで、出演拒否した1953年を除いて連続して指揮をした。

この時代(1930〜1960)の指揮者達は、フルトヴェングラーを始めとして、現代の指揮者に比べあまりスコア(楽譜)や過去の演奏を重視せず、指揮者の自由に指揮しているため、指揮者の個性が強烈に出ますが、その中でもクナッパーツブッシュはメチャクチャに自由奔放で、スコアよりも自由に指揮することを好む個性的な指揮者のトップランクに位置する指揮者です。解釈の幅が広くて、聴いていて非常に面白い。彼は細かいところにこだわるよりも、感情的で情熱的な起伏ある音を響かせることを重視しておりまして、チェリビダッケあたりとは対極ですね。良い意味で「エンタメ!」って感じがする指揮をしており、その演奏は現代の人々が聴いても十二分に楽しめると思います。

彼のもっとも定評ある演奏は、ワーグナーとブルックナーですが、ベートーヴェンもブラームスも自由闊達な好演奏で僕は大好きですね。勿論、ワーグナーとブルックナーの演奏は素晴らしいものです。彼の指揮するブルックナーの八番とか聴いていて震えがきますね…。八番の第四楽章とか神懸かり過ぎて聴いているだけで感動の涙が…。世界最高のブルックナー指揮者です!!

彼のワーグナーも素晴らしいと思うのですが、いかんせん、僕自身が音楽の趣味として歌劇が余り好きではないので…。一応、代表的な1951年のバイロイトのパルジファル四枚組とかは一通り聴いてはいますけど…。長大な歌劇を全幕通して聴くよりは、僕の音楽的趣味としてはワーグナー歌劇から彼が指揮する管弦楽曲を抜き出して集めた管弦楽曲集を聴いた方が楽しめるという感じですね。ただ、彼の代表作の1951バイロイトのパルジファルは5000円と、既に超廉価になっているので、この値段で彼のワーグナーをたっぷり堪能できるのは、お買い得な良盤とは思います。管弦楽曲集は1000円で更に安いですが、入っていない管弦楽曲多いので…。

彼のブルックナーはぜひ聴いてみて欲しいですね。おどろくほど表情豊かな、素晴らしい幅広い色彩に溢れるブルックナー、世界最高のブルックナー指揮であると今もって断言できる稀有な指揮です!!特に第八は神降臨としか言い様のない演奏です。クナッパーツブッシュ指揮ブルックナーの第八、ベルリン・フィルもいい演奏していますが(HMVの廉価選集http://www.hmv.co.jp/product/detail/2514805はベルリン・フィル盤、これも好演奏です)、ご余裕あれば、ぜひ究極の名盤ミュンヘン・フィル盤を一度聴いてみて欲しいです!!

ウィキペディア「ハンス・クナッパーツブッシュ」
特に(知る人ぞ知る)名演と言われるのが、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮して演奏した交響曲第8番ハ短調(LPレコード:ウェストミンスター盤)である。第8番は彼のブルックナー演奏の中でも、最も取り上げた回数が多い。

この文章をクナッパーツブッシュの第八聴きながら書いていますが、涙が滲むほど良い出来ですね…。無限のスケールで神に迫っている究極の演奏としか言い様がないです。音楽の一つの絶対到達点であると言えると心から思います。全ての人にお勧めの名盤ですが、特に、例えば初音ミクのボーカロイド(DTM)とか、自分で音楽作りをやっている人は、ぜひ聴いて欲しいですね…。きっと、感動的な糧になると思います。

ワーグナー指揮者とブルックナー指揮者は一致しているとよく言われる。オペラと交響曲、外観こそ異なれ彼らの音楽を構成している音の論理には共通性が多い。自然発生的動機、メロディー・時間芸術というよりももっと原始的な響き自体の法悦、空間芸術。

『ここでは時間が空間となるのです』

そして何よりオーケストラの無限の表現力を本能的に確信している音楽家の感性!楽器には最も美しく響く音量というものがある。PP無視により細部が明瞭なほどに聴き取れ全ての主題が生きる。うるさいほど強要される代わりに美しく響かせる――最も美しい「音勢」というものがあるのだ。

この最も美しく響く「音勢」を本能的に把握している人こそ真のワーグナー指揮者といわれるに相応しい。そしてクナッパーツブッシュこそその第一人者であることに異論を唱える人は少ないだろう。
(クナッパーツブッシュ指揮「舞台祝典神聖劇『パルジファル』 1951バイロイト祝祭劇場盤」ライナーノーツより)

細部が明瞭なほどに聴き取れ全ての主題が生きる――、彼のブルックナー第八、このことの意味が心から実感できる途方もない名演奏です。

参考作品(amazon)
ブルックナー:交響曲第8番
ワーグナー:名演集
舞踏への勧誘〜クナッパーツブッシュ名演集
ワーグナー:舞台神聖祝典劇「パルジファル」全曲(クナッパーツブッシュ)(バイロイト祝祭劇場)(1951)
ブルックナー:交響曲第9番 [Import]
ブルックナー:交響曲第7番
ブルックナー:交響曲第5番
ブルックナー:交響曲第4番
ブルックナー:交響曲第3番 [Import]

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