2010年02月27日 11:20

女子フィギュアスケート浅田真央選手、残念でしたね…。魔的な音楽とオリンピック。

浅田舞 真央 スケーティング・ミュージック2009-10(DVD付)
ラフマニノフ:作品集
昨日は女子フィギュアスケートを視聴していました。浅田真央選手、好演技でしたが銀メダルに終わり残念でしたね…。彼女に金メダルを取らせてあげたかったです。浅田選手が泣いているところでは、こちらまで涙がでそうでした…。四年後の浅田選手が金メダルを取ることを心から深く願います。

僕はフィギュアスケート詳しくないのですが、素人目にはフリーもショートも浅田選手がキムヨナ選手に負けているとは思いませんでした。両方とも技術的に浅田選手の方が勝っているように見えたのですが…。今回見ていて思ったのは、残念ながら音楽の魔力が浅田選手の足を引っ張っちゃったのかなと…。今回の浅田選手の選曲、ラフマニノフは、『ラフマニノフの音楽を使うと金メダルを取ることができない』というジンクスのある作曲家でして、こういったジンクスが超自然的な力を持っているとは思いませんが、審査員もこのジンクスを知っていますから、審査員の心象、審査の心理的な側面に、このジンクスが影響した可能性は否めません。それを思うと、本当に残念ですね…。

僕は物理法則に反した超自然的な事象は信じませんが、人間が超自然的なことを意識することによって引き起こされる事象の影響の大きさは信じますね…。特に音楽はその要素が強いと感じます。例えばグレゴリオ聖歌にはある種の酩酊的な恍惚感がありますが、それはこの聖歌がラテン語の祈りの詠唱であり、歌い手達自身がある種の酩酊的な恍惚感を持って歌っている(宗教的なトランス状態で唱えている)のが、聴いている人間にも伝播してくるからだと思います。

ほとんどの宗教のなかで、音楽がその重要な実践として取り入れられているのは、和声や音階が人間の魂にある回路を開き、宇宙の見えない音楽、あるいは秩序を感じさせるからだろう。世界的なブームになったグレゴリオ聖歌は、もともとラテン語の祈りを詠唱するうちに旋律が生まれてきたのだという。仏教の経でもそうだが、目で読むためではなく、発声することによって、旋律のかたちで宇宙の秩序が現前し、詠唱する者ばかりではなく、その場にいる者を巻き込んでゆくのである。
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音楽は人間に神聖さや魔的なものを感じさせる力がありますね。ラフマニノフは、明らかに魔的な影響力を持つ、トリッキーで悪魔的な感じのする音楽の作曲者でして、007の映画音楽など、明るくリズミカルな、神聖さの音楽でやってきたキムヨナ選手に、音楽的に勝てなかったのかなと思いました…。神聖さと魔的なものが対立したとき、多くの人々は前者を勝たせようとするものですから。僕は、神聖さも好きですが、魔的なものもとても好きなので、浅田選手の演技は本当に良かったのですが…。

僕は魔的な音楽が好きなので、今回の浅田選手の演技は魔的な音楽と合わさってとても良いものだと感じましたし、結果としては負けましたが、浅田選手の演技はとても良い演技だったと心から深く思いますね。僕の好きな魔的な音楽アルバムをご紹介しようと思います。名ヴァイオリニスト、ギル・シャハムのアルバム「悪魔のダンス」です。

ギル・シャハム
「悪魔めいた、魔物めいた、暗黒の、亡霊めいた音楽を弾けるようになることは、ヴァイオリニストであることの楽しみのひとつです。僕と同じくらいこのテーマ(悪魔の音楽)を楽しんでくれたように思えるドイツ・グラモフォンのチーム全員に大いに感謝。ジョナサン・フェルドマンとジョン・ウィリアムズには、2曲のファンタスティックな新しい編曲でこの不気味な作品集に貢献してくれたということで、特に感謝したいと思います。」
(ギル・シャハム「悪魔のダンス」ライナーノーツより)

演奏者のギル・シャハム自身が語っている通り、このアルバムはテクニカルでトリッキーで悪魔めいたヴァイオリン曲を魔的に弾くという、『悪魔の音楽』というコンセプトで作られた音楽アルバムです。ライナーノーツによると隠しトラック『ギルの魔女の耳鳴り』という魔曲が隠されて入っているらしいんですが、残念ながら僕のプレイヤーだとこの隠し魔曲は聴けませんでした…(ライナーノーツによるとプレイヤーによって聴けるプレイヤーと聴けないプレイヤーがあるみたいです)。ただ、普通に聴ける13曲(悪魔の音楽なので曲数は13です)、どれも激しく、おどろおどろしく、胸を妖しく掻き立てるような奇怪さと共に異様にスピードが速く酩酊感のある魔曲ぞろいでして、ギル・シャハムの熱演と魔的な音楽がベストマッチ、とても素晴らしいです。

このアルバムを聴いていると、魔的な音楽を奏でる楽器ということでは、ヴァイオリンに並ぶものはないなと思いますね…。天使達の吹くのはトランペットですが、悪魔や死神が奏でるのはヴァイオリンですから。悪魔の中の悪魔、魔王ルシファー(サタン)自らも、ヴァイオリンを奏でると言われていますね。そしてローマの暴君ネロは燃え盛るローマに歓喜しながらヴァイオリンを弾いたと言われます(後世の創作逸話)。本アルバムライナーノーツより、ディヴィッド・ロレンスの文章を引用いたします。

ディヴィッド・ロレンス

「死の舞踏、または悪魔が私にさせたこと」

なぜサタン(魔王ルシファー)がその音楽を奏でるのにフィドル(ヴァイオリン)を選んだのか、実のところ知っている人はいるだろうか?彼はかつて天使であり、そのことからすれば、(天使だった頃吹いていた)トランペットの方がお似合いだったのではないか――(中略)

否、ヴァイオリンこそが(悪魔の楽器として)ぴったりだったのだ、恋歌がその魔力を働かせたあとでこの楽器は大いなる裏切りを仕掛け、扇情的な輝きを放つのだから――炎へ向かって、熱の只中へ。目もくらむようなスピードと恐ろしさで。フィドルにはそういうことができた、それを弾く人間がそのきわめつきの(魔的な演奏)能力を喚び出し得るかぎり。

サタンその人がヴァイオリンをお気に入りの楽器として選んだわけではもちろんない。われわれが彼にそれを割り当てたのだ。ローマが燃えている間、ネロがヴァイオリンを弾き散らしていた[その頃フィドルの存在すらあったのだろうか?あの堕落したつまらぬ皇帝が、(ヴァイオリンを魔的に弾くという)その困難さを手中に収めていたというのでもいうのか?]という神話から、たとえば、イーゴル・ストラヴィンスキーの「兵士の物語」のような話に至るまで、自ら作り出した歴史的、超自然的な存在の手にこの魅惑あふれる楽器を託してきたのは、われわれ自身なのだ。(中略)

アンブローズ・ビアスにとっては、フィドルはただ厭なもの――「馬の尾で猫のはらわたを摩擦して人間の耳をくすぐる道具」(悪魔の辞典)でしかなかった。ビアスはもちろんメキシコの荒野に消えてしまい(ビアスはメキシコの荒野で行方不明になる)、その後二度と彼を見たものはない――おそらく、サタンお気に入りの音楽のおもちゃを馬鹿にしたりするのは、あまり賢いことではなかったのだろう。(中略)

(アントニオ・ストラディヴァリが生み出し、いまだに再現できない)あの魔法の液体(特殊な配合のニス)によるコーティングをふたたび生み出そうと繰り返される現代の試みは、鉛を黄金に変えようとする中世の錬金術師達の切望とそれほど違ったものだろうか?

ヴァイオリンそのものが秘密主義や超自然性、魂に及ぼす効力を持ち合わせているとすれば、こうした特質はその奏者たちに、さらにはそのために曲を書いた人々に、遥かに上乗せされてきたことになる。(中略)パガニーニを語らずにはいられようか。こけた頬、青ざめた顔色をして、ヨーロッパを征服したばかりか、彼が弾く間は見えない悪魔がかたわらに立っているのだとヨーロッパの人々に確信させたのは、まさにこの長身痩躯の魔術師だった。(中略)

(パガニーニの悪魔的な演奏に魅了された作曲家・演奏家に)ロベルト・シューマンやフランツ・リスト、セルゲイ・ラフマニノフなどがいる。パガニーニは音楽界における神秘めいた崇拝の的となり、以後、彼の長く骨ばった指がいともやすやすとつかんでいたかに見えた悪魔的な音の連なりと向き合わずに済んだヴァイオリニストは出ていない。ラフマニノフが――この人のテクニックの秘訣も、より新しい時代のピアニストたちに決して完璧に明かされてはいないのだが――、〈怒りの日〉を、《パガニーニの主題による狂詩曲》に織り込んだのは決して間違いではなかった。(中略)

いずれにせよ、真の魔術師の音楽を奏でるには真の魔術師がいる。このアルバムでお聴きになろうという曲のページに悪魔的な点を見い出したことがかつてあるならば、おそらくフィドルとその弾き手――ギル・シャハム、あるいは彼の弓を動かしているかもしれない誰か――の力にこくりとうなずくことになるだろう!

魔的な音楽には、ポピュラー音楽や神聖な音楽とは違う独特な魅力があって僕は好きですね。今回のオリンピックで浅田真央選手が、魔的な音楽の作曲家であるラフマニノフの曲でオリンピックで金メダルを取ったら、これは魔的な音楽にとっても、大きな一歩だっただけに、敗れてしまったことは本当に残念ですね。四年後は、ぜひ浅田選手に金メダルが取れて、浅田選手の今日の日の涙が笑顔に繋がることを心から願いますね…。

参考作品(amazon)
浅田舞 真央 スケーティング・ミュージック2009-10(DVD付)
Enigma 3: Le Roi Est Mort, Vive Le Roi!
悪魔のダンス
ラフマニノフ:作品集

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