崖の上のポニョ [DVD]
崖の上のポニョ [Blu-ray]

――ルルイエの棲家にて死せるクトゥルフ夢見るままに待ちいたり
(ラヴクラフト「クトゥルフの呼び声」)

再び海の時代が始まるのだ。
(「崖の上のポニョ」)

「崖の上のポニョ」視聴中。映画館で見たときも思いましたが、クトゥルフ神話体系そのものですね…。星辰の動きが狂いルルイエが浮上する、ああ、宇宙的恐怖!!

そのような巨大な力を有するものの生き残りが今なお現存することは考えられる……それは意識体が形を成し始めた悠久太古の時代の存在であって、潮のごとき人類の進出の前に姿を消して久しい……その姿は詩と伝説のみが遥かの記憶の裡に捉えて、それに神とか、怪物とか、諸々の神話の存在の名を与えるのである。
(アルジャーノン・ブラックウッド)

『崖の上のポニョ』 クトゥルー神話
http://budouq.blog5.fc2.com/blog-entry-625.html
この作品は、だいぶ「クトゥルー神話」を踏襲した創りになっており、そういう見方をするといろんなことに説明がつき、全然わからないことなんかなくなります。てゆか、さっき自分で「難しいこと考えるな」って言ってたのに。でも、どうしてもこの駄目脳ミソがそういう観かたをしてしまうのですテケリ・リ。

まず、よく言われてる「ポニョって何よ?」、「魚の子じゃないの?」という点。ヤツは、「父なるダゴン」と「母なるハイドラ」、そして全ての水棲生物の支配者である「大いなるクトゥルー」を崇拝する「深きものども」に違いありません。

ヤツが魔法を使う時に垣間見せるあの「インスマス面」が、その何よりの証拠。魚というより、両性類に近いソレらは、人類と交配してその数を増やしながら、「大いなるクトゥルー」の復活の日に備えて準備を進める、旧支配者の眷属に他ならないのです。

「かつては私も人間だった」というポニョの父親による台詞。否応なく、マサチューセツ州の港町インスマスに「深きものども」を引き込んだ、かのオーベッド・マーシュ船長を彷彿とさせます。オーベッド船長を含めたマーシュ家の人間は、「深きものども」を妻に娶り、その見返りとして巨財を築きあげました。

しかし、その「深きものども」の血を受け継いだ子孫たちは、生まれてからある程度の期間は普通の人間と変わらない姿をしてはいるものの、同族との接触や極度のストレスなどをきっかけに「インスマンス面」と呼ばれる「蛙に似た容貌」に変容するのです。

そして、ポニョの父親の「悪い魔法使い」という設定については、ダンウィッチにて「ヨグ=ソトース」を召還する儀式を執り行い、ソレを実の娘に娶らせた「魔法使いノア・ウェイトリー」の所業をも想起させます。というか、環境保護思想も潔癖すぎるとああなるよっていう逆説的なメッセージにもとれますけど。

さらに、あの「巨大なお母さん」について。アレが「ダゴン」なのか「ハイドラ」なのかはわかりませんが、デボン紀の海を懐かしむソレは、間違いなく「大いなるクトゥルー」の崇拝者であり、正史以前の地球に君臨していた「旧支配者」に違いありません。

しかも、ポニョパパがアレを「あの人」と呼び、決して名前を口にしないのは、その名前が「忌み名」だからです。旧約聖書の唯一神「YHWH」のように、その名をみだりに唱えてはならないほど、アレは高い神格だってことをも示しているわけです。メガテンでいうとLv90ぐらい。

あと、諸星大二郎の漫画『栞と紙魚子』シリーズに出てくる、「クトゥルーちゃん」の「お母さん(巨大。ドアを開けるといつも顔だけしか見えない。)」が、あの母親にそっくりなんですよね。ていうか、その夫「段一知(普通の人間)」とその娘「クトゥルーちゃん」の家族関係が、ポニョの家族と被ります。パクリとかそういう低脳な指摘はしないけど、全く意識してないとはいえないでしょう。

最後に、主人公?の男の子がたどるであろう今後の運命について。クトゥルー的に考えると、「犬に噛み殺される」とかろくな死に方はできなそう。あと、「生まれた双子の子供のうち一人はあまりにも異次元の血が濃く、その巨大な姿を世間の目から隠すために納屋の改築を繰り返す人生」とか。

ラヴクラフトの原典から引用しますね…。

グレート・オールド・ワンズ(偉大なる古き支配者)は、血と肉によって在るものではない。形はあった――星辰の映し出す映像がその証拠となる――が、それは物質ではない。星辰が古き正の位置にあったとき、彼らは世界から世界へ天空を飛び回ったが、星辰の動きが狂うと、生きられなくなった。彼らはもはや生きてはいないが、死んでもいない。かれらはルルイエの巨大都市の石の棲家で、星と地球が再び正の位置に戻る栄光の復活の日を待ちながら、クトゥルフの偉大な呪文に護られ横たわっている。(中略)

無限の混沌の後に最初の人類が生まれたとき、グレート・オールド・ワンズは夢を創り出し、人間のうち最も繊細な者に語りかけた。それは哺乳動物の肉体を持つ精神にかれらの言葉を伝える唯一の方法であった。

そして、とカストロ老人は囁くように言った。この最初の人類は、グレート・ワンズが見せてくれた像を中心として宗教を作り上げた。測り知れぬ時代を超えて、暗黒の星々からもたらされた像である。この教義は星辰が再び正の位置に戻る日まで絶えることはない。秘密の信徒達は偉大なクトゥルフを墓から起き上がらせ、彼の臣徒達を蘇らせ、彼らの地球支配を取り戻すだろう。そのとき人類は、グレート・オールド・ワンズのように無限の自由を得て、善悪を超越し、法と徳は消え去り、万人が歓喜のうちに叫び殺し合い浮かれ狂うだろう。そして蘇ったグレート・オールド・ワンズは人間に、殺戮と狂喜乱舞する法悦の味わい方を教え、地球は恍惚と自由に満ちた大殺戮の焔で焼かれ尽くされるのだ。そのときまで、この教義は、独特の祭儀で古代の記憶を保ち続け、彼らの復活の予言を伝えてゆかねばならない。

遥か昔は、選ばれた人々は横たわるオールド・ワンズと夢の中で交信していたが、その後、何かが起こった。巨石都市ルルイエは、石碑や墓地もろとも海の底へと沈み、思考を超えた原始の謎を深い海が飲み込み、その霊交を断ち切った。しかし記憶は絶えることなく、祭司達は、星辰が正しき場所を得るときルルイエは再び浮上するであろうと告げた。爾来、忘れられた海底からのおぼろげな言葉を伝えるべく、黴くさい影のような黒い地霊が底から現われ出る。(中略)

奥義を伝授された者のみが読む、狂気のアラビア人アブドゥル・アルハザードが著した「ネクロノミコン」の中の、特に論議の対象となる対句には、二重の意味があるという、それは…

『久遠に伏したるもの死する事なく、怪異なる永劫の内には死すら終焉を迎えん』

(中略)クトゥルフは依然として生き続けていると私は思う。太陽がまだ若かった頃から彼を庇護している、あの巨石の深い深淵の中で生き続けているだろう。呪われた都市は再び海底に沈んだ。四月の嵐以降、ヴィジラント号はその地点を航行しているのである。しかし地上の祭司どもは今なお、人気なき場所で、偶像を抱いた石碑の周りで吼え、跳ね、殺戮を繰り返しているのだろう。「かれ」は再び暗黒の深淵に沈んだに違いない。さもなければ今頃は、世界は恐怖と狂乱で泣き叫んでいるであろう。

いつ終局が訪れるのか、誰にもわからない。浮かび上がったものはいずれ沈み、沈んでいたものはいずれ浮上するであろう。忌まわしく奇怪なものが、深淵で浮かび上がる日をうかがいながら夢見ており、頽廃は危機に瀕した人類の都市の上に広がりつつある。やがてその日はやってくるだろう――
(ラヴクラフト「クトゥルフの呼び声」)

ぽ=にょぽ=にょぽ=にょ だごんの子
深い海からやってきた
ぽ=にょぽ=にょぽ=にょ はいよった
インスマンス面の深きもの

ああ!ポニョが!窓に!窓に!

参考作品(amazon)
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