2010年01月03日 04:51

うみねこのなく頃にEP6クリア。ミステリとして破綻した、出来の良くないファンタジーになってしまいましたね…。

赤んぼう少女―楳図かずお作品集 (角川ホラー文庫)

うみねこのなく頃にEP6クリア。うみねこのなく頃にEP4ぐらいまでの、まがりなりにもミステリとしての体裁をそれなりに整えていた頃とは違い、今回はほぼ全編が余り出来の良くないファンタジーで、僅かにミステリ編のヒントをちょこちょこ出す形になってしまいましたね…。うみねこシリーズが始まった頃はミステリとしての整合性と謎解きを期待しておりましたので、ここに至って、既に全体的な物語の整合性は破綻し、もはやミステリと言えるような代物ではなくなってしまったのが、僕としては残念です…。

トリックをただ提示してそれを解けというだけでは、それは物語のないパズルに過ぎない訳です。Whydunit(ホワイトダニット、なぜ犯行に至ったのか)に説得力があるかどうかが優れたミステリにして優れた物語か否かの試金石だと思います。その点において、うみねこシリーズは、Whydunitを完全に無視した、謎解きの為の謎解き展開を無茶苦茶強引に作ることばかりで、ミステリとしても物語としても完全に破綻しているのが残念です。特に今回のEP6になると、完全にWhydunitを無視した、ただトリックを脈絡なく提示して、そのトリックを強引に成立させる為に無理な設定を加えて(例えば今回で言えば、第一の晩の犠牲者達に対する古戸エリカの有り得ない無茶苦茶な行動)、物語の整合性を完全に無視し、謎解きの為の謎解きをただひたすら作っていて、正直なところ、極めて残念な出来であるとしか云い様がないと思います…。今回のEP6ではっきりしましたが、うみねこシリーズはひたすらHowdunit(ハウダニット、具体的犯行方法)だけを追い求めていて、物語としては、完全に筋も展開も破綻していますね…。

僕はうみねこをいまだにミステリとして読んでいる(読めると思っている)ので、ほぼ全編ひたすらファンタジーで、ミステリ編のヒントを僅かに出すという展開だと、長い内容をひたすら読みながら、ファンタジー編はいらなくて、ミステリ編のヒントだけでいんじゃないかと思ってしまいますね…。EP6作中において作品自らに対してメタ突っ込みを入れていましたが、作中の突っ込みの通り、青臭い恋愛展開がだらだらと続く今回は読んでいて非常につまらなかったです…。竜騎士07さんは恋愛シーンを書くのが非常に向いていないと思いました。ミステリの醍醐味である謎解きの知的な展開を期待したいのですが、そういった展開が全然なくて、まだミステリシーンには入らないのかとひたすら思いながら、だらだらしたファンタジーシーンや恋愛シーンを読んでいました…。

肝心のミステリシーンに入っても、先にトリック(Howdunitの謎)ありきで、そのトリックを強引に設定するための無茶苦茶な展開があまりにも酷く、ため息が漏れるばかりです…。竜騎士07さんはもう少し普通にミステリ小説を読んで、物語に説得力と整合性を持たせるようにした方がいいかと…。あまりにもメチャクチャな有り得ない展開に、興醒めすることしきりです…。

まあ、それでも、EP6を一通りクリアしたので、僕なりの謎解きを行ってみたいと思います。まず、紗音と嘉音は同一人物だと思います。これは作中で、肉体は同じでも人格が違えば別人として扱うということを、ベアトリーチェに絡めて、極めて言い訳弁解じみた感じで強調しているところから、実際は同一人物でも、紗音と嘉音という二つの人格を二人の人間として扱うというトリックだと思われます。正直なところ、赤字(本シリーズの作中で絶対的な事実の提示には赤字が使われる)の使い方としてもミステリとしてもアンフェアと思いますが、「このメチャクチャミステリでは仕方ない…」とため息とともに思いました…。肉体が同じでも人格が違えば別人として扱う(二重人格者を二人の人物として扱う)ということであれば、今回のメイントリック(Howdunitの謎)は簡単に説明できます。嘉音の人格が戦人と入れ違いに部屋に入りチェーンロックを掛けた後に紗音の人格に変わったので、嘉音は部屋から消えた、と作中では説明されるということなのではないかと。実際は部屋の中に居るんですが、二重人格を二人の人間として扱うというルールだと、これでも説明は通るかと思います。いとこ部屋は密室ですが、隣室は密室ではない(窓から出られる)ので、いとこ部屋に元々嘉音はおらず、隣室の紗音が窓から出た後に嘉音人格にチェンジしたのでしょう。

後は、上記に比べると確証は薄い推測(赤字のないところからの推測)ですが、紗音・嘉音の二つの名を持つ二重人格者が実は三重人格者であり、三つ目の人格がベアトリーチェでもあるのかなと。六年前に戦人がベアトリーチェに女性の好みを語っているシーンがありますが、このとき語っていたのが、実際は紗音・嘉音・ベアトリーチェの三重人格者だったと考えると、その後、誰がベアトリーチェの振りをしていたのか、という問題で、それがこの人物であったと筋が通ります。後は、戦人と紗音・嘉音・ベアト三重人格同一人物の関係ですが、おそらく異母兄弟ではないかなと。霧江の息子が戦人(死産と偽られ、留弗夫・明日夢夫婦に奪われた)であり、明日夢の子供(生別不明)が紗音・嘉音であり、紗音・嘉音・ベアトは夏妃の子供(養子)にされるが、夏妃・楼座の手によって崖から投げ落とされ重傷を負い、作中の孤児院に送られ、傷が癒えて成長してから右代宮に仕えるようになったのかなと。そして、六年前、戦人との間に何かがあり、異母兄弟の戦人の為に、右代宮家を滅ぼそうとしているのかなと…。

紗音・嘉音・ベアトリーチェが三重人格の同一人物というのは、今回のEP6で、紗音、嘉音、ベアトの三人がファンタジー世界で一人だけが残る戦いを強いられるというのが伏線になっていると考えることもできると思います。この人物が犯人だとすれば、マスターキーが使える上に、作中のルール上で、実際は同一人物でありながら、作中では三人として扱われる(赤字ルールにおいても)という特権がもし与えられていたら、一見不可能犯罪に見えるこれまでの犯行は可能となるでしょう。例えば、紗音は死亡、嘉音は死亡と赤字で説明されても、「それはあくまで人格の死であり、肉体は別人格として生き残って活動している」という反則技が使われます…。正直なところ、もしこのトリックを使ったら、アンフェアの極み、ミステリとして最悪最低だとは思いますが、今後使われそうな予感が残念ながらひしひしとしますね…。「愛がないと(別人格が)見えない」とか適当な理由付けられて使われそうです…。もし使われたら愛とかご大層なものではなく、単にアンフェアなだけですが…。

うみねこシリーズ、今まで出たシリーズ全てプレイしておりますが、残念ながら、シリーズが進むことに、ミステリとしての出来(整合性)が大きく破綻してきており、物語としては完全に破綻しています。どんどん場当たり的な展開になってきていて、緻密に計算された論理的な面白さの要素が全く感じられません…。シリーズを重ねるごと(新作を読むごと)に今後のシリーズに対する期待値が急速に下がっているというのが正直なところです。作中で作者(竜騎士07さん)が読者を批判というか罵倒しているような要素を含ませてくるのもどうかと思いますね…。読者を批判するなら、まずは読者を唸らせるような質の高い作品を書いた上で読者批判を行うべきで、現在のうみねこシリーズのようなプロットやシリーズ構成が完全に崩壊した、場の勢いで適当に書いているとしか思えない完成度の低い作品で読者批判をされても読者からの失笑を買うだけでしょう…。読者を唸らせる優れた本を書くなら、それ相応の丁寧な下準備が必要ですが、うみねこシリーズの伏線の杜撰さや強引な展開を見ると、竜騎士07さんはそういった丁寧さを大きく欠いているとしか思えません…。そういった丁寧さを欠いた破綻した作品内で、読者は無能だ愚鈍な豚だと作者が喚き散らしても、それは恥ずべき行い、ひたすらみっともないだけでしょう。大槻ケンヂさんと楳図かずおさんのエンターテイメント論を引用します。

大槻ケンヂ
「(楳図かずおさんが漫画を描くときは)なんで怖いんだろうっていうのを分析しながら怖がらせようって感じですか?それとも描きながら自分で怖がっちゃう?」

楳図かずお
「そういうのは絶対にないですね。分析しながらっていう感じです。大槻さんなんかもそういうところがあるんじゃないですか」

大槻ケンヂ
「僕は詞を書く時はそうです。ファンの気持ちっていうのがわかるんで、それを逆手にとって詞をかくわけです」

楳図かずお
「やっぱりものを作るんですから、そこらへんの演出みたいなのがないと、きちっとまとまっていきませんよね。本能的にどんどんやっちゃうのもあるんでしょうけど、そういう人はまったくの破滅型で、エンターティナーじゃないんですよね。エンターテインしようとするとどこかで計算してないと。こういう風にすると面白いよっていうのが、わかってないとね」

大槻ケンヂ
「じゃあ、頭から終わりまで完全にシナリオみたいなの作ってから描くんですか?」

楳図かずお
「作りますね、僕は」

大槻ケンヂ
「『漂流教室』なんかも?」

楳図かずお
「あれは相当細かいところまで書き出してから描きましたね。もちろんやってるうちに思いついてっていう部分もあるんだけど、大まかには最初に決めちゃうんですよ」
(楳図かずお「赤んぼう少女」より)

うみねこシリーズ、Howdunitの謎だけ重視して有り得ない強引な展開を無理矢理積み重ねるこれまでの杜撰で場当たり的な手法を止めて、ミステリの醍醐味であるWhydunitの謎に対する説得力をきちんと持たせた、今までの謎を快刀乱麻に解き明かす、一つのミステリ、一つの物語として納得が行く、フェアで見事な謎解き展開を、今後はどうか期待したいですね…。

参考作品(amazon)
赤んぼう少女―楳図かずお作品集 (角川ホラー文庫)
うみねこのなく頃に Episode1:Legend of the golden witch 1 (ガンガンコミックス)
TVアニメーション 「うみねこのなく頃に」 コレクターズエディション 初回限定版 Note.01 [Blu-ray]
TVアニメーション 「うみねこのなく頃に」 コレクターズエディション 初回限定版 Note.01 [DVD]

amazonオタクストア

amazonトップページ




Archives
livedoor プロフィール

ねこねこ

記事検索
  • ライブドアブログ