2009年11月18日 06:59

あにゃまる探偵キルミンずぅと諸星大二郎「バイオの黙示録」。SFにおける人類種の二つの未来。

あにゃまる探偵キルミンずぅOPED主題歌「Poo/Chuai Mad Noi」
未来歳時記・バイオの黙示録 (ヤングジャンプコミックス)

最近酷く寒いですね…。僕は昨日より喉が痛くて、寒くて息を吸うと喉が痛みます。皆さん寒さにお気をつけ下さい…。本題に入りますとあにゃまる探偵キルミンずぅ第七話「神浜峠でゾウを見た!?」視聴。本作は基本はほのぼの動物変身コメディですが、ちょこちょこと妙にSFっぽいギミックがあるのが面白いですね。今回、アニマリアン(動物から人間に変身できる種)の目的が「アニマリアン革命」であるということが明かされましたが、革命というところは手塚治虫の作品「バンパイヤ」っぽく(バンパイヤは、獣人達を率いた野心家のロックが革命を起こし人類を征服しようとする)、またその革命達成方法が人間を動物に変身できるアニマリアン種にするというのは、諸星大二郎のSF作品「バイオの黙示録」っぽいですね。「動物と人間の境目をなくす」ということから見ると、バンパイヤよりバイオの黙示録に近いかなという感じがします。

諸星大二郎さんの「バイオの黙示録」は、生命と環境を遺伝子レベルで汚染したバイオ戦争とバイオテロ、そして遺伝子改変技術の無分別な利用の拡散によって、あらゆる種の遺伝子が混ざり合い、動植物に本来とは別の種の遺伝子が発現して姿形を始めとする生命形態がどんどん変容してしまうようになった世界が舞台です。都市に住みかつての人類文明をなんとか維持している人間達は、薬を飲むことで他の種の遺伝子発現を抑えて人間の姿を保っているのですが、都市の外に住む難民達は他の動植物と入り混じったキメラになっています。また、都市以外に住む他の動植物や農園の植物や家畜なども、人間を始めとした様々な種の要素が遺伝子レベルで混ざり合い、なんだかわからないキメラになっています。

「バイオの黙示録」は、都市の外側(キメラ化した生命)と都市の内側(薬でキメラ化を抑えている人間達)の対立と、都市の内側からの変容、薬では抑えられないレベルで、都市の内側でも生命がキメラ化してゆく恐怖などを描いた傑作です。SFホラーの要素がかなりあって、ゴキブリに変貌してゆく都市の少年の話とか映画の「ザ・フライ」を思い起こさせて怖かったですね…。最終的にはあらゆる種が入り混じりあう大変容の中で人類種は消滅することが示唆されています。ゆえに「黙示録」な訳ですね…。

「あの風が何なんだ?」

「バイオの風だよ」

「バイオの風?」

「そう言われている。……いつか荒れ地の奥の奥から強い風が吹いて来て、農場も街もあらゆる土地を吹き渡る……その風はすべての人間の眠っている潜伏遺伝子を発現させるって……その時は街の人間が使っている薬なんか役に立たない……」(中略)

「さっきの風に吹かれたな。それで奥地に行きたいのか?だがやめておけ。まだ動物になりきっていない者は……もっと大きい風が吹くのを待て」

「吹けばどうなるんだ?」

「全ての人間の潜伏遺伝子が発現し人間と他の生物との境界はなくなる。あらゆる遺伝子が混じり合い、新しい種が次々と生まれる。本来の人間の種は消えてなくなる。そして荒れ地を中心として新しい生態系が作り出されて行くのだ。新しい天地創造だ!人類に後戻りの道はない!」
(諸星大二郎「バイオの黙示録」)

人類種の行く末を描く大きなテーマのSFには大きく分けて二つの未来がありまして、一つは生命の機械化、機械と生命が融合してゆくサイボーグ的な未来です。SFコミックの「攻殻機動隊」「銃夢」などがこれに当たります。もう一つは生命の変容、人類種とは別の種に生命の形態が変容してゆく未来でして、上述の「バイオの黙示録」やSF小説では「幼年期の終わり」「ブラッド・ミュージック」、アニメの「新世紀エヴァンゲリオン」もこちらに当たりますね。あにゃまる探偵キルミンずぅは、作中のSF的なガジェットを見ると後者の変容を描くのかなという感じがしますね。ただ、あにゃまるの場合は、人類種がアニマリアン種になったとしても、人類種が滅びることの悲壮感みたいなものはこれっぽっちも無さそうなのがSFとしてみると新しく、実に面白くて楽しいなあと。どっちかというと、人類がアニマリアンになったら、みんな動物に変身できるようになって世界が楽しく便利になるような感じです。ここら辺、主人公達の動物への変身をとても楽しそうに描いているのが大きいですね。見ていると、僕も猫に変身してみたいなあと思いますもの…。

参考作品(amazon)
あにゃまる探偵キルミンずぅOPED主題歌「Poo/Chuai Mad Noi」
未来歳時記・バイオの黙示録 (ヤングジャンプコミックス)
バンパイヤ (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)
バンパイヤ (2) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)
バンパイヤ (3) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)
攻殻機動隊 (1) KCデラックス
攻殻機動隊 (2) KCデラックス
銃夢(Gunnm) (1) (YOUNG JUMP愛蔵版)
銃夢(Gunnm) (2) (YOUNG JUMP愛蔵版)
銃夢(Gunnm) (3) (YOUNG JUMP愛蔵版)
銃夢(Gunnm) (4) (YOUNG JUMP愛蔵版)
銃夢(Gunnm) (5) (YOUNG JUMP愛蔵版)
銃夢(Gunnm) (6) (YOUNG JUMP愛蔵版)
幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))
ブラッド・ミュージック (ハヤカワ文庫SF)
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 特装版 [DVD]
ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 (EVANGELION:1.11) [Blu-ray]
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