2009年11月12日 22:17

衛星第二で0:40より放映する「海を飛ぶ夢」、とてもいい映画です。お勧めです。

海を飛ぶ夢 [DVD]
ラモン・サンペドロ「海を飛ぶ夢」

なかなか更新できずにすみません。昨日から体が酷くだるくてあまり動かない状態でした。今日はお伝えしたいことがあるので、それについて。衛星第二で0:40より放映する「海を飛ぶ夢」、とてもいい映画です。お勧めです。この映画は、ノンフィクション映画でして、そのことも考えながら見ると、より感慨深いかなと思います。本映画の主人公のモデルであるラモン・サンペドロの原作も優れています。実際のことだと思うと、心が痛みます…。

映画の内容は、尊厳を持った安楽死についての内容で、主人公は、頚椎骨折で全身不随になっており、自らの死を求めて戦うのですね…。彼は全く動けないので、自分自身だけではどうしても死ぬことができず、また、周りの人が彼を死なせたら殺人罪になってしまうので、彼は一生懸命死にたいと願っているにもかかわらず、望まない生をずっと送り続けることになる。彼は誇りある死(尊厳死)を求めて、自らの死のために懸命に社会と戦うというドキュメント映画です。非常に心打たれました…。

僕は、尊厳死は認められて然るべきものだと思っているので、映画を見ていると、苦痛の暮らしのなかで、心から死を望んでいるのに、死ぬ事ができない主人公がとても気の毒になってきます…。作家乙一さんの小説「失はれる物語」を思い出しますね…。「失はれる物語」でも、全身不随かつ外界とのほとんど一切のコンタクト能力を失った主人公が、「死なせてくれ」と一生懸命懇願するにもかかわらず、周囲が決して死なせてくれない。結果、主人公は死よりも恐るべき無の苦痛の世界でずっと生き続けることになることが、淡々とした筆致で描かれており、読んでいて怖いと思いました…。「失はれる物語」は生き地獄が延々と続くというところに、筒井康隆さんの小説「生きている脳」のリメイク的要素がありますね…。この映画の主人公は、乙一作品や筒井康隆作品の悲惨極まりない主人公とは違い、外界の情報を入手できるのと、自分の意志表示がある程度豊かにできるので、それで救われている側面があります。主人公は、一生懸命、自らの意志で周囲の状況、運命的な状況に抗うことができ、そこに救いがあります。大変苦しい状況にいながら、必死で運命に抗う主人公が感動的でとても良い映画です。お勧めですね…。

小松左京さんのSF小説で、今よりもずっと高度に人権・自己決定権が認められている社会で、リビング・ウィル(自己の生命に関する事前宣告書)の制度がきちんと法制度化されており、無理矢理な医学的治療・延命治療を望まない人は、リビング・ウィルの意志表示を示すバンドをつけていて、そのバンドをつけている人に無理矢理な医学的治療・延命治療を行ってはいけないという社会を、今よりも理想的な社会として出しておりましたが(題名失念しており申し訳ないです)、そういった社会は、人々を無理矢理従わせる生権力の社会より、ずっと良い社会であると思います…。今の日本では、日本尊厳死協会が、もしものときのためにリビング・ウィルの書類を保存してくれますが、協会会員のみのサービスで、書類の保存が受けられる終身会員になるのに七万円も掛かるので、高いです…。お金持っている人しか、自らの生命に対するきちんとした意志表示もできないのかと思うと辛いですね…。ちゃんと法制度化するべきことと思います…。

遺言とリビングウイル
http://www.osoushiki-plaza.com/institut/dw/199709.html
日本での尊厳死
  医療の進歩で、昔なら助からなかった命も救われるようになった。その反面、末期で回復の見込みのない患者を生かし続ける延命技術も発達した。人工呼吸器などチューブ状の生命維持装置が体内に差し込まれた状態は、「スパゲティ症候群」と呼ばれ、過剰な医療の象徴とみなされている。
  こうした風潮のなかで、むだな延命治療を拒否し、自然に近いかたちで死を迎える権利の確立を求めて運動している団体がある。国内で最も大きい民間団体が日本尊厳死協会だ。
  日本尊厳死協会は、1976年1月に、医師で国会議員の故太田典礼氏を中心に医師や法律家などが集まって設立された。自分の病気が医学では治らず、死が迫ったときに、自らの「死を選ぶ権利」を持ち、その権利を社会に認めてもらおうというものである。
  日本尊厳死協会の会員は年々増え、設立20年目の97年には8万人になった。会員の約6割が65歳以上であるが、若い人の会員も多くいる。死亡会員の遺族のアンケートをみると、1997年には96%の医師が「リビング・ウイル」を受容したという。

その主な趣旨
□不治かつ末期になった場合に、延命措置を拒否する
□苦痛を最大限に和らげる治療を希望する
□植物状態に陥った場合、生命維持装置での生存を希望しない。日本尊厳死協会は、こうした趣旨を謳った「リビング・ウイル」を発行し、入会者が作成したこの書面を保管している。

日本尊厳死協会
  http://www.songenshi-kyokai.com/

参考作品(amazon)
海を飛ぶ夢 [DVD]
ラモン・サンペドロ「海を飛ぶ夢」
乙一「失はれる物語」
筒井康隆「くさり―ホラー短篇集」

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